いじめ防止に地域の力を
 
 いじめ問題が社会現象になっていますが、いじめは学校内だけで起こることではありません。子どもの保護者はもとより、子ども育成者はいじめに関して意識を高め、正しい知識を持って、すべての大人が子どもを守る体勢を地域で作りましょう。


                     〜以下、研修会・討論会等のまとめ より〜

いじめの間違った認識 

【気にしすぎ「いじめではなく子どもの悪ふざけや悪戯」】

 いじめと言っても様々な形があります。精神的に苦痛を与えられる行為から身体に危害が与えられる行為、またいじめる側といじめられる側の行為に対する意識の差によって産まれるもの。しかしいじめの多くは犯罪行為です。悪ふざけや悪戯であっても、される側が嫌がっているなら犯罪行為になります。
子どもは悪戯をします。ですが少数にターゲットを絞って執拗に苦痛を与える行為は悪戯で済ませる範囲を超えています。驚かせる事を目的にして、苦痛を感じる前にやめるのなら悪戯ですむでしょうが度を超えるとそれでは済みません。いじめを十把一絡げに悪ふざけや悪戯と言い切るのは誤った認識です。
悪ふざけや悪戯にせよ、児童が苦痛を訴えている事を受け止めて対処すべきです。


【「いじめは昔もあった、みんなそれを乗り越えて成長してきた」】

 自分の知る範囲を「みんな」と言う言葉で括ってはいけません。
昔、いじめにあったという人の中にも人生を大きく狂わされた人もいます。
また、今のいじめは、昔とは異なる部分が多くあります。大人の価値観が多様化する中で成長する子どもの気持ちは複雑です。明かな悪者が一方的に嫌がらせしているのではなく、何らかの理由を持っていじめている場合も多くあります。
昔との大きな違いは、いじめているのがわかっていても止める者がいなくなっています。関わる事を恐れている時もありますし、いじめている子に賛同し心の中でいじめに参加している子もいます。


【「いじめられる側に問題がある」】

 誰しも欠点があり、いじめられている子にも何らかの問題がある事が多くあります。
ですがその子の短所や問題点が、いじめて良いと言う事に繋がりません。
欠点や問題点を修正し、人や社会と協調させる手段がいじめではありません。
また、その欠点によって迷惑を受けたとしても、いじめという報復を許してはいけません。子ども達がその子の欠点や問題点によってトラブルが起こるのであれば、それはそれで何らかの解決方法を考えるべき事であり、子どもだけで手に負えないならば大人と相談して解決を図ると言う手順を子どもに教えるべきです。

 大人が「いじめられる方にも問題がある」と発言する事は、どんな事でもいじめる理由になる事を許しているのと同じで、力の強い者が自由に犯罪行為を行える土壌を作って、規律が崩壊します。


【「いじめられないように強くなるべき」】

 弱いからいじめられるのではありません。
いじめは『多数vs1人』と言う構図が大半です。たった一人の強さなど知れているのですし、孤独は精神を弱めていきます。
この言葉は子どものプライドに大きく関わっており、この認識が周囲の雰囲気にあると、いじめられている事を告白できなくなります。
『いじめられている=自分は弱い』 これを簡単に認める事など出来ないのです。
少なくともこうした認識を無くし、告白しやすい雰囲気を作る事は大人の義務です。


【「社会に出たらもっと厳しいのだ」】

 子どもがしているようないじめを、もし大人がしたら多くは犯罪になります。
社会がこれよりもっと理不尽ならば、社会を変えるように大人は努力すべきで、第一に出来る事は次世代の教育です。子ども時代から、このような事を許していては良い社会になりません。

 社会に出る時に備えて、子ども時代に少しずつ堪える訓練を積み重ねていかなければいけない事はたくさんありますが、いじめられる行為に必要な要素は全くありません。
堪えなければいけないのは、いじめる方の気持ちです。


こんな時どうする

【理由無く子ども会活動を避けだしたら】

 いじめの可能性も考えて、活動そのものを嫌がっているのか、子ども会の中での人間関係を避けているのか、周囲の子に、最近の様子を良く聞き、注意して観察してあげてください。

【活動中、一人でいる事が多いと思ったら】

 いじめを受けている事をアピールしている可能性も考えて、積極的なコミュニケーションを取って下さい。いじめの場合、気づいてくれた事をきっかけにして告白する事もあります。

【行事中などに、いじめらしき現場を目撃したら】

 取りあえずその場に行き、何があったのかを聞きます。
その後はできるだけ被害児童の近くにいるようにします。
あとで被害児童と思われる子だけにいじめられているかどうかを聞きます。(問いただしてはいけません)
もし何事もないと言われても、自分はいつでも味方である事を伝えておき、地域の専門員に相談します。

【いじめを受けていると告白されたら】

 まず気持ちをすべて受け入れて、話をよく聞き、辛い気持ちに共感してあげる。
今後どうしたいかをその子に問い、一緒に親や学校教師に相談する方向へ導きます。
拒否された場合は地域の専門員へ一緒に相談する方向へ導きます。それも拒否された場合は、その子の許可を取ってあなただけで地域の専門員に相談に行き、指示を仰ぎます。
あなただけで行く事すら拒否された時は、その子の名前を伏せる事を条件にしてでも、了解を取ります。
 親でも教師でもなくあなたに相談してきたのです。その信頼を壊さないよう注意して、まず相談してくれた勇気を誉めてあげて下さい。

 <まずい対応>
    ○言ってはいけない言葉
      「気にするな」「それはいじめと違う」「強くなれ」「お前にも原因がある」
    ○まずい対処
     ・いじめている側を呼び、謝らせて一件落着したつもりになる。
     ・本人の意思を聞かず親に伝える
     ・すぐに子ども全員でこの件の話し合いをする
     ・何もしない


【緊急性の見極め】

 いじめだと気づいた時、緊急性があり、早急な保護が必要かどうかを考えなければなりませんので、事実確認をしっかり行い、被害児童の気持ちがどの程度のものかをよく感じて次の対処を考えてあげてください。第一に優先するのは児童の命と身体です。

【指導者としての普段の心がけ】

 子ども会指導者は教育の専門家では無い人が大多数です。いじめに遭遇すれば、指導者自身がどう対処していいのかわからない事も多いかと思います。
いじめは必ず起こりうると言う気持ちを普段から持って、大人同士の繋がりを強固にしておく必要があると思います。
 いじめを発見したり相談されたら、一人で悩んだり適当な対処をせず、地域のコーディネーター(専門員)に相談して下さい。
専門員については最寄りの教育委員会へお問い合わせ下さい。
当会へのご相談はメールでお知らせ下さい。
info@kodomokai.gr.jp